ホテル内の装飾も手掛ける「かざり工房しおざわ」

こんにちは。ザ・ゲートホテル両国のスタッフです。ザ・ゲートホテル両国の館内には、モノづくりのまち・墨田区にちなんで、区内に工房を構え活躍する職人による魅力ある作品があちらこちらに存在しています。今回はその一つである、「錺金具(かざりかなぐ)」のアートに注目し、それを手掛けた錺職人・塩澤政子(しおざわ まさこ)氏にもお話を伺ってきました。

寺社仏閣などの金属の装飾「錺(かざり)」

錺(かざり)とは、鏨(たがね)と呼ばれる工具を使って加工、装飾された金属のことです。鏨(たがね)とは、真鍮、銅、銀といった金属を切ったり掘ったり削ったりする工具のことで、工具の端をかなづちで叩き、金属に模様をつけることもできます。

このような錺金具は、現在でも、お寺や神社、そしてお神輿の飾りとして見かけることができます。錺を扱う職人たちは、建築物や工芸品の”装飾”と”補強”を兼ね備えた模様を刻み、美しい錺金具を生み出しています。

時代の変遷と錺金具の変化

錺金具を生み出す鏨を使った技術の歴史は、仏教が伝来した飛鳥時代が起源と言われるほど古く、仏閣やお神輿の錺、道具を作る時に用いられてきました。

平安時代になると、お金のある貴族によって、平等院鳳凰堂や、中尊寺の金色堂に代表される阿弥陀堂建築が多く建てられ、その煌びやかさは権力をかざす意味でも需要がありました。

桃山時代には、錺金具もより豪華になり、文様も細かい動植物が施されるようになりました。代表的な模様としては、菊唐草などの植物や、鶴・亀などの動物が、時代を越えてモチーフとして使われています。

そして現代でも、日本古来のデザインを用いた伝統的な技法が引継がれ、今もなお残る職人たちが、1品1品丁寧に手作業で仕上げています。

ザ・ゲートホテル両国館内の錺アート

ザ・ゲートホテル両国の館内では、この錺を使ったモダンなアートの数々をご覧いただけます。

1F エントランス

1F エレベーターホール

まず、1Fからホテルエントランスに入ると、エレベーターホールの壁面に、ずらりと石のようなアートが並んでいます。これは、隅田川の川辺の石をモチーフにした、ガラスを重ね合わせて作ったアート作品(今村知佐氏)です。

その合間に2つだけ、ブロンズ色に輝く桜のアートを見つけることができます。こちらが、塩澤氏が手掛けた錺アート作品です。桜は、隅田公園に毎年咲き誇る桜をイメージして作られました。

小石に混ざって2つだけ、違う輝きを放つアート
桜のつぼみの部分まで、平面でありながら柔らかい丸みのある美しさ

9F エレベーターホールとラウンジ

9F エレベーターホール

1Fの桜と対比するように、9F(ご宿泊ゲスト専用フロア)に上がると、今度は紅葉をモチーフにしたアートがあります。

桜と対になっている紅葉アート

また、そのままご宿泊者様専用ラウンジへ向かうと、ラウンジの入り口にもバーサインとして灯りがともされた、さりげない紅葉が。もちろん、こちらも同じく塩澤氏の作品。ライトに照らされた影も美しく、計算された美を感じます。同じ銅を使っていますが、先ほどの桜アートとは違い、立体感が出るような作り方になっています。

9F ラウンジの入り口

2F お手洗いピクト

2F お手洗いと喫煙所のご案内アート

こちらはなかなか気づきにくいところではありますが、お手洗いの場所を示すこちらのアートも、よーく見ると、文様が入っています!これも塩澤氏の作品で、真鍮銀古美(しんちゅうぎんふるび)メッキアートというものです。男性は少しふくよかなシルエットですが、これは両国のお相撲さんをモチーフにしているからなのだそうです。

古美とは伝統的な加工技術のひとつで、わざと経年劣化させたような仕上がりのことだそうです。そして、男性の方の文様は「波に千鳥」というもので、扇型の線を交互に重ねて波を表現した青海波(せいがいは)といい、穏やかな波がどこまでも続いている様子から、縁起が良いとされています。

メッキ塗装する前のピクト

錺職人・塩澤政子氏と「かざり工房しおざわ」

かざり工房しおざわのショップ「工房牡丹」の外観

ザ・ゲートホテル両国の錺アートを手掛けてくださったのは、塩澤政子(しおざわ まさこ)氏です。

塩澤氏の工房「かざり工房しおざわ(旧・塩澤製作所)」は昭和16年(1941年)に創業。

お神輿や神社仏閣の制作に使われる道具の他、ブローチや箸置き、名刺入れなど、日常生活で身近に使えるような錺金具の作品を制作されています。

お神輿用の錺 
煌びやかな鳥の作品

錺金具が出来るまで

普段は、ほとんどが注文製作だそうです。イメージの下絵を描き、切り取った地金に直接鏨で模様を打ちます。1つの鏨は、1つの決まった模様線しかつけられないため、およそ1500本(!) もの鏨を吟味しながら組み合わせて、理想の模様を描いていくそうです。その他、木槌でふくらみをつけて立体感を出すことも可能で、最終的にメッキや金箔で仕上げていきます。ちなみに、お神輿には約2000個もの「錺金具」がついており、製作には約3ヶ月を要します。

グッズ紹介

鏨(たがね)の息吹(名刺入れ)

真鍮の素材に銀古美メッキの名刺入れ

まるで機械で打ったかのような、繊細で丁寧な模様は、まさか手作業で刻まれたとは思えない美しさです。青海波に波千鳥をあしたったデザインで、鏨にしか生み出せない、細かなギザギザの跡。上品なこの作品は、「すみだモダン2010」認証作品でもあり、お祝い事のプレゼントにも選ばれる一品です。

ちなみに、丸いものはマグネット。塩澤氏が初めて作った身近な錺金具だそうです。

※すみだモダン…墨田区の地域ブランドの価値規定にふさわしいとして認定された商品

家紋が入った画鋲「錺画鋲」

銅と真鍮に古美加工を施した「錺画鋲」

平安時代が起源とされる家紋が、可愛らしい小さな画鋲に。2万種以上ある家紋と、千年を超える伝統を持つ錺金具を未来に繋げていきたい、という想いから生まれました。「すみだモダン2013」に選出されています。

Kazari(錺のアクセサリー)

 kazari

より身近に使えるものとして、髪留めやイヤリングなどのアクセサリーになった錺の形です。平成26年度TASKものづくり大賞の優秀賞に選ばれています。

※TASKものづくり大賞…地域で培われた技術を駆使して作られた”良いもの”を開発し提案、【台東区・荒川区・足立区・墨田区・葛飾区】の5区で審査を経て選出されるもの。現在は墨田区以外の4区で「東京TASKものづくりアワード」に変わっています。

オリンピック記念のチャーム

記念に作られたオリンピック限定のチャーム

2021年東京オリンピックでは、両国・国技館でオリンピック競技のボクシングが行われ、入江聖奈選手が見事金メダルを受賞しました。その記念として、ボクシングのグローブをモチーフにした輝くチャームを作成依頼され、限定品として販売をしていました。グローブは、墨田区出身の漫画家・ちばてつやさんの「あしたのジョー」に出てくるグローブのイラストをイメージしたものだそうです。

布製品の展開も「たためるさんばいざぁ」

所せましと並べられた様々な布のサンバイザー

「かざり工房しおざわ」の店舗には、錺金具だけではなく、写真のような布製品も取り扱っています(錺職の傍らでこういったお仕事もされているとのこと)。

ただのサンバイザーとしての役割だけでなく、生地に一本の釣り糸を入れることで、使わないときにコンパクトに折り畳んでしまえるのが特徴。元々、オリンピック用に海外のゲストへ使ってほしいという想いから、和柄の生地を中心に製作されています。こちらも、平成30年度TASKものづくり大賞の優秀賞に選ばれています。

これらのグッズは、工房ショップ「工房牡丹」でお買い求めいただける他、一部オンラインショップでもお取り扱いがあります。何気ない日用品に取り入れられた、煌びやかで繊細な職人技に、日々が彩られるかもしれません。是非お手に取ってみてください。

SHOP DATA

  • 店名 かざり工房しおざわ(工房牡丹)
  • 住所 130-0011 東京都墨田区石原1-38-7 
  • TEL 03-3621-7983
  • URL https://tagane.jp/
  • 営業時間 11:00~17:00
  • 定休日 水曜日

*営業時間、休日など、最新の情報は直接、お店にお問い合わせください。

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